何時ものように部活へ行く。
体育館は蒸し風呂のようだ。
器具を準備しただけで汗だくになる。

僕の通う高校の男子器械体操部は不人気で先輩もいない。
公立だから設備はぼろぼろ。
先生はいい人だけど指導はあまり熱心じゃない。
どう頑張ったって夏休み明けの試合に勝てないのは
わかってるからだろう。

そんな中、僕はただ単純に体操が好きだから頑張ってる。
となりで練習してるバレー部の顧問は言う。
「おまえが勉強も体操くらい頑張ってくれたらな…」
嫌な正論だ。

今日も床競技の伸身宙返りの着地がうまくいかない。
ジュニアからやっている人間なら中学生でもできる技。
僕はきれいにできない。
焦りや苛立ちの混ざった汗が額を流れ目に入る。

「ガンバ!」

後輩のかけ声とともに足を踏み出し、
助走からロンダート(バク転・バク中などの前動作)の姿勢に入る。
体がマットの中心からずれているのに気づくが、
暑さで冷静な判断力を失っている僕は、
そのまま次の動作(バク転)へ。

ぶれたままのバク転で、軸はさらにずれる。
フィードバックなんてできない僕の体は
最後の伸身宙返りであさっての方向へ飛ぶ。

僕はなにを思ったのか体を引き起こす。
道を間違っても引き返さずに目的地へ行く人間が、
人生最大の判断ミスをした瞬間。

体は重力に引かれ後頭部から床に向かって落ちていく。
頭が床にぶつかる音は聞こえない。
骨と筋の悲鳴だけが聞こえる。

落下した僕のまわりに人が集まる。
一瞬立ち上がりかけたが、すぐに崩れる。
また起きようと思ったけど、こんどはなぜか体が動かない。

動かない体を誰かが椅子に座らせる。
僕は声も出ない。

目の前はむささき色でだんだん暗く、黒くなってゆく。

「僕はこんな所で死ぬのか、死にたくない!
 こんなところで死にたくない!!」


頭の中ので叫ぶ声は、
迫ってくるある感覚を必死で拒否している。
走馬燈(過去の記憶のリピート)を見る余裕なんてない。
目の前が真っ暗闇になる。

気がづくと僕は床に寝かされていた。
視界が光を取り戻し始め、人の顔が見えてくる。
みんなの顔が見えるようになり、
「だいじょうぶ」とひとこという。

第二の人生で、初めて口にした言葉は嘘。

体育館の汚い天井と、窓から少しだけ見える青空が
目に映っている。 

li10-11

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